第61回 一人当たりの舗装道路が最も多い国はどこですか?

 1つの数字で、都市部間の複雑な違いを捉えることはできません。違いをとらえる観点は沢山あります。つまり、何を建設するか、どのように建設するか、どのような外観になるか、そしてそれを維持するために何が必要になるかというようなたくさんの観点があります。

 しかし、時には、1つの数字がすべての詳細を切り抜け、世界のある側面に関する根本的な真実を明らかにすることはあります。GDPや平均寿命などの統計を測定するのはそのためです。これらの統計は、私たちが知る必要のあるすべてのことを教えてくれるわけではありませんが、物語の一部は教えてくれます。

 たとえば、次のような簡単な質問に対する答えを考えてみましょう。「人口一人当たりの舗装面積が最も多い国はどこですか?」

 ネタバレする前に、自分の直感について少し考えてみてください。その質問からどんなイメージを連想しますか?AとBのどちらに近いでしょうか?

人口一人当たりの舗装面積が多いのはどちらの国でしょうか

 実は、この問いに関する面白いデータがあります。国別の不浸透表面積に関する広く引用されている研究が、2007年にSensors誌に掲載されました。この研究では、不浸透表面積(ISA)を「道路、駐車場、建物、車道、歩道、その他の人工表面」など、水が浸透せずに流れ落ちるものすべてと定義しています。研究者らは、衛星画像における夜間照明の存在と明るさ、人口密度を調べることでISAを推定するモデルを考案しました。研究者らは、高解像度の航空写真でモデルの精度をテストし、それを世界中に適用、それを以下の表にまとめました

クマタカ注)ISAは道路を含めて人工的に加工された表面の面積ということなので、建築、土木を含めた皆様の産業に関わる国際参考指標になるかもしれません。ここでは、舗装面積をISAとして議論しています。

 調査では、予想通り、世界最大の国である中国がISAの総量で世界一であることが判明しましたが、人口1人当たりで見ると75位でした。表から代表的な結果をいくつか下記に示します。

 一人当たりのISAが最も多い国はどこでしょうか。アラブ首長国連邦(ドバイとアブダビの本拠地)、続いてカナダ、フィンランド、米国です。
カナダでは舗装された土地の面積は一人当たり352.7平方メートル。米国は296.8平方メートル。

 では、上記右側の写真はどこで撮影されたのでしょうか?ドイツと推測した方は正解です。ドイツの一人当たりISAは103.1平方メートルです。(左は米国)

 ドイツは、人口一人当たりの舗装面積が米国の3分の1強です。この2つの国はどちらも高速道路で有名で、比較的裕福な国です。

 実際、ほぼすべての西ヨーロッパ諸国では、一人当たりの不浸透面積が米国よりはるかに小さく、約70%(ノルウェーとスウェーデン)から半分以下までの範囲です。

 密集した「コンクリートジャングル」都市で知られる裕福な国、日本でさえ、一人当たりの舗装面積はわずか114.5平方メートルで、米国の40%未満です。日本の典型的な郊外の道路は次のようになります。

 JAFに聞いたところ、「豪雨のなかの運転は路面が滑りやすくなることや、視界が悪化することによる他車や歩行者の視認の遅れに注意が必要」とのことです。また歩行者や自転車などは突発的な行動が増え、事故のリスクが高まる傾向があるそうです。見事なパッチワーク

 米国とカナダにISA(不浸透性表面)がこれほど多いのには単純な理由があります。ISAが存在する主な要素は3つあります。

① 建物 ② 街路と道路 ③ 駐車場

 この3つのうち②と③は車に関係しています。そして、この車の使用に関するほぼすべての指標において、アメリカは1位です。

 米国の第二次世界大戦後の郊外開発は、自動車を単なる交通手段としてではなく、普遍的で、ほとんど必須の交通手段として、都市を根本的に再設計するというものでした。世界の他の国々は、ある程度アメリカ式の郊外開発を採用し、高速道路も建設しましたが、アメリカは他のどの国よりもこの実験に全力を注ぎました。そして、カナダも概ねそれに倣いました。

 このような車に関する事情で米国とカナダのこの指標が突出しているわけです。

 別の見方をすれば、これは、一人当たりのインフラ装備率ともいえる指標ですね。国土の形状、面積にもよりますが、北欧、欧州は、一定の社会資本が提供済みと考えてよいのでしょうね。日本もこれからの人口減少を考えると、ヨーロッパ並みの水準になるのでしょうか。

 また、既存のインフラ維持にかかる費用を考えると、先進諸国にはこれから先に、重い課題があることもわかります。

いかがでしたか?

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