第69回 世界の中で道路の渋滞が激しい国はどこ?

 日本では、ドライバーの多くが渋滞の多さに不満を感じているはずです。国土が狭く人口密度も高いので、ある程度は仕方のないことにも思えますが、世界と比較するとどうなのでしょうか?
 そこで「世界統計年鑑2018」(英エコノミスト誌)に掲載された「道路の混雑指数」という数値を元に、渋滞が激しい国ランキングをまとめてみました。

 世界の道路混雑ランキングの1位は、やはり日本でした。しかも、渋滞指数(道路網1km当たりの自動車数)は628.4台とダントツで最大です。ランキング上位の大半は人口が少ない国ですが、日本だけが1億人を超えています。人口が多いのに道路渋滞が酷いので、日本の道路事情は残念ながら世界最悪だと言えます。

 日本は戦後の高度経済成長期に、道路の整備や拡張が進められてきました。当時は一日当たり約30kmのペースで、道路が延長されてきた計算です。しかし古くからある歩道を舗装するだけだったり、国道や高速道路も地上げのしやすさ優先で建設されたため、道幅は狭く入り組んだ構造が多い羽目に陥りました(特に東京や大阪)。そのため同じ距離でも、渋滞が発生しやすい道路事情となっているのです。

 面積が狭い国ほど、渋滞は発生しやすくなります。日本は国土が狭い割に人口が多く、しかも自動車普及率が高くなっています。つまり日本は、国が狭くて道路の拡張が難しいうえに、自動車台数が多くて道路密度が高いという、二重の意味で渋滞が起こりやすい問題を抱えているのです。

UAEやシンガポールなどは計画都市として渋滞減少に務めている

 日本以外の国では、UAEやバーレーンやシンガポールなど、経済発展は著しいが国土が狭いという国が、ランキング上位を占めています。

 ランキングの実質的な4位は香港です(国ではないため順位外)。香港の道路は一方通行や右折禁止の場所が多く、目的地に中々たどり着けない場合があります。とはいえ、実は香港では車の普及率が低く(1000人当たり約80台)一部の富裕層以外は所有していないため、渋滞の原因は道路が狭い・非効率である事に集約されます。ただし香港は土地が狭くて拡張性に乏しく、経済発展で地価も高騰して地上げも難しい、と問題点が日本と似ています。

 ランキング6位はシンガポールです。国土は東京23区とほぼ同等という狭さで、慢性的な渋滞が起こっていました。そのためシンガポール政府は、車を購入する際に本体価格とは別にライセンスの購入を義務付け、車が一定数以上に増えないように政府が管理しているのです。
 またシンガポールの道路は、政府主導で計画的に地上げ・拡張が進められているので、車線が多く、経路も分かりやすいように整備されているのです。この結果、シンガポールはランキングの6位ですが渋滞が減少傾向にあるようです。

 シンガポールと同じように、UAE(アラブ首長国連邦)など中東の国も、政府によって計画的に道路の拡張・整備が行われているため、渋滞は減少傾向にあります。これらの国は、日本など先進国の道路行政の失敗を研究して、渋滞を減らす事に成功しているのです。

道路の渋滞が激しい国ランキングまとめ
・日本の道路は世界一渋滞が激しい
・国土が狭く、無計画に道路が作られた問題が原因
・シンガポールやUAEなどは道路計画により渋滞を減少させている

 先進国を反面教師とした計画的な道路行政の典型例としては、ブラジルの首都=ブラジリアが有名です。元々ブラジルの首都はリオデジャネイロでしたが、人口密集を回避するため、1960年にブラジリアが新たな首都として定められました。

 ブラジリアの場所は当初何も無い荒野でしたが、国を挙げてわずか3年で計画都市を築き上げました。ブラジリアでは信号待ちの渋滞を極限まで減らすために、立体交差を駆使して渋滞の起きにくい道路網を構築したのです。
 しかしそれでも、経済発展に伴い自動車が増えすぎて渋滞が起きるようになったことや、地元以外の人からは「道路が複雑すぎて分かりにくい」との批判もあるなど、問題も少なくありません。

 経済発展急速に進み、自動車の数や人口が膨らむ国々の道路計画は、やはり相当に難しいということですね。発展する国々が、日本の道路事情から学ぶことは大いにあるのでしょう。


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